辻さんの自伝、「刀」のメモ書き

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絶版なのかわかりませんが、入手困難な辻さんの自伝小説「刀」。

アマゾンではみぽりんの事があるまえは700円台で中古が売っていたのに、今見たら3万円に跳ね上がってますね。皆さん、図書館に行ってくださいー。無くても、司書さんに言えば近隣県の図書館からも探してもらえるはずです。

ぼったくり価格の本しか今は無いので、みぽりんが登場する部分のみ、メモ書きを書いておきます。もし本が再販されたら消すかも。

適当なメモ書きなので、ご容赦ください。。

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登場人物の想定

  • トオル:辻さん
  • 岸ナナ:みぽりん
  • スターアカデミー:ナナが所属する芸能界最大勢力の事務所
  • 佐々木:ナナのマネージャー
  • 千恵子:南果歩さん
  • 一心:2回目の結婚時、南果歩さんとの間にできた長男
  • ニナ(フランス人):ナナの友人

ナナが登場する、180頁以降のメモ書き

最初の出会いは、フランスシャルルドゴール空港でトオルがナナを見かけた。目が一瞬合っただけ。

次の出会いは、男性雑誌の企画でナナの対談相手にトオルが選ばれた。

対談の撮影後、食事に誘われ、最後のバーを出たのは明け方。トオルがナナを送ることになりタクシーに乗った際、ナナがトオルの手を強く握りしめた。「いつか連れて行ってください」とナナから意味深なことを告げられる。

この小説からは、最初からナナが主導権を握っているのが見えます。

トオルの仕事部屋にナナが来る。(ここからナナの駆け引きが始まる)

ナナ「本当の私を知ったら間違いなくあなたは逃げ出すでしょう。みんながそうしたように」

数日後、約束ナシにナナがトオルの仕事場にトランク持参でやってきた。ナナは一緒に暮らしている人がいたが、別れ話を済ませてトオルの元へ。

持ち物は沢山の旅ステッカーが貼られたトランク1つだけ「これが私の全てです」。

二人は能天気な恋をしている状態ではなかった。ナナの背後にはスターアカデミーの存在がちらつく。危険を冒しているのではないかという不安や警戒心が増すトオル。

勝手な想像ですが、ナナはちゃんとした自分の自宅を持たず、彼氏の家を転々としていたことがあるのでしょうか?それなら最後の自宅が事務所が用意したマンションだったのも頷けます。

二人はパリに旅行に行き、そこでこれからの未来構想を話し合う。

ナナ「もう恋はいいんです。恋とか愛とかそうゆう形ばかり気にしなければならないものはいらないの」。

ナナ「フランス語を習って話せるようになりたい。ここで子供を育てるのよ、いいアイデアでしょ

トオルの顔が強張る。

もう恋はいい=恋は疲れた。恋ではなく即結婚。このような考えは30代の女性であれば気持ちわかります。しかしもう恋はいい、という言葉の裏には「燃えあがるような恋心はない(でも安心できる信頼できそうな相手)」なのかな、と。

ナナは話す。

生まれた頃の貧しかった記憶、不在の父親の匂い、色のない路地、転校した先の校庭の色、理解されない言葉たち、光りの届かないプール、愛のない人々、見たこともない街の景色、手を引く知らない叔父さん、暁に揺れる海岸、幾つかの事件、芸能異界に足を踏み入れた時の光景、家族との日々、そして生涯ただひとつの夢について。

彼女にとって必要なものは世界でただ一つであり、それを私(トオル)が了解し、私がそれを持っているかどうかを見極めるためだけに最初の三か月間は存在した。

あっさり壊れるならそれも仕方ない、とナナは決然と考えていた節がある。全く妥協せず話してきた。

ナナはあまり恵まれた環境で育ってないようなので、強くなるしかなかった。

ナナのマネージャー、佐々木登場。
まずトオル原作の映画化の話は進んでいたが、トオルが監督をするのは反故にされた。
ナナ「監督なんてしなくていいと思います。むしろ引き受けないでほしい、あなたはもっと大事なものがあるから

テレビ局とスターアカデミーが動いている。トオルの出る幕はなかった。

ナナ「芸能界を知らないほうがいい」「芸能界はあなたが生きる場所ではありません」と断言。「あなたはそこに近づかないほうがいい。見ていてハラハラする。危険です。

「見ていてハラハラする、危険です」と言う言葉はとても強くて、業界の本当の怖さがにじみ出ているように感じました。本当に危険なんだから、野心を出してちょろちょろするな、と、10以上も年上の人に言ってしまうナナ。血を見るような汚い世界で生きて来たからこその忠告でしょう。

トオルは、自分は結婚をしたいとか子供を作りたいという気持ちが一切ないことをナナに宣告したが、

ナナ「私にとっては人生でもっとも重要な事です」と言われる。

ナナは今までの、捨て去らねばならなかった幾つかの恋について話した。どんなに願っても幸福になれないのは自分が生きている場所のせい。

ナナの夢「愛する人の子供を産んで、誰にも邪魔されず静かに暮らすこと」

トオルは引き気味ですが、ナナはぐいぐい行きますね。

ナナが苦しんでいるのは岸ナナという顔。自分が歩いてきた道を誇りに思ってはいたが、その名声が自分を不幸にしているとも考えていた。

事務所についてどう思うのか問うと、「いいですか。私がスターアカデミーなのです」と力強く答えた。

「いいですか、私がスターアカデミーなのです」の言葉にちょっとゾっとしました。私たちが勝手にそう思いたい「裏に怖い事務所がいる、独立させてもらえない気の毒な芸能人」ではなく、「ナナと事務所は一心同体」ということをナナがしっかり自覚しているということ。

トオルが自分の仕事への野心を話すと、

ナナ「賞を取って評価される事がそんなに大事?ベストセラーを出すことや、映画祭に行って人々に握手を求められる事がそんなに大事ですか?

ナナ「お金がなくても幸福なら私はやっていける」

トオル「高級車にも乗れないよ、広い家にも住めないよ」いろいろ言ってみる。

ナナ「魂を売ることはない、と言ったまでです。あなたは幸福がパンよりも飢えをしのぐのに適切な食べ物だということを知らない世界一不幸な人です」

ナナはトオルに野心を捨てることを誓わせます。この意味は深い。それほど、一度入れば抜けられない業界、そこに入るなと言う意味でしょう(勝手に想像)。

ナナは自分が幾ら稼ぐかを知らないばかりか、その一切を人に委ねており、カードを一枚握りしめているだけであった。

彼女はカネというものを呪っていたし、カネには決して自分からは近づかない人だった。では無欲か、といえば違う。愛情への欲望は人一倍強かった。カネで買えないものだけを求めた。

カネを呪っていたというのも頷けます。カネと欲にまみれた、表はきらびやか、裏は汚い世界。

ナナ「愛してくださるなら、覚悟をしてください

ナナ「野心を捨ててください。争いごとを避けて、無理をしない程度の仕事量にしてください。私が生む子供とつつましく向き合って、家族の傍にいてください。そうすればあなたは幸福になる

野心を捨て、争いごとを避け、、

確かに辻さんは、今もずっとこれを貫いておられますね。争いを避け、誰に何を言われても、何を書かれても、一切反論せず嵐が過ぎ去るのを待つ、、沈黙の体制。これが「覚悟の正体」。

そう言えばみぽりんも、マスコミに何を書かれても言い訳しない人でした。争いを避けるは鉄則。。

結婚する日はナナが決めた。急すぎる日程にトオルは戸惑う。
ナナ「あなたの気持ちが揺れる前に、そして映画の成功とひきかえに私たちは結婚をするのです」

トオルがTVドラマ脚本を書いた話をするとナナの眉間は険しくなる。
ナナ「あなたは文学の世界だけを大切にしてください」

トオルが、事務所に挨拶に行こうと提案するもナナは小さく首を振った。

「普通の人にとって結婚は仕事ではありません。でも私の場合は仕事にもなるのです。意図しなくとも事務所がそうしようと思わなくても、岸ナナという芸能の亡霊は生身の私の日常とは無関係に一人勝手に動きまわります。周囲もほうってはおかない。私が生きていること全てが仕事になってしまう。だから私はこの結婚だけは自分で決めて自分で行動を起こしたい。これを仕事にするつもりは毛頭ありません。私は報告するだけです。あなたは防波堤になってくださればいい」

結婚だけは自分で決めたかった。うまくいって、本当によかったですよね。

入籍日が決まり、ナナの両親に会う。

次に佐々木マネージャーに話すも賛成も反対もされなかった。ナナとマネージャーは血縁的雰囲気があった。

シナリオをめぐりナナと監督Uの意見に接点が見いだせずにいた。決まっていた監督が降り、映画化は暗礁に乗り上げる。

ナナ「映画をきちんとやりとげ、今後も仕事を精一杯続けることが会社と社長への唯一の報告なのです」

佐々木「一応、おめでとう。あなたたちが本気になると周囲が大変なんだ」

佐々木ほどの知恵と力があれば、私とナナの間を巧妙に引き裂くことは出来たはず。けれども佐々木は誰よりナナを理解し愛した一人の男である。本質のところで小言は言わなかったし常に遠くを冷静に眺めている男だった。私には佐々木のようにすべてを委ねて任せられる相談相手はいなかった。

監督不在で映画は延期。その代わりナナ主演で連続ドラマの話がある、それだけは引き受けてもらうよ、と佐々木に言われる。

スターアカデミーの意向に沿わない結婚が明るみになり、日本ではマスコミが騒ぎ立てる。私はここでも沈黙を守り、嵐が過ぎ去るのを静かに待った。これがナナとの約束、ナナが私に言った「覚悟の正体」なのである。

マネージャーさんはナナの幸せも願ってくれていた様子。

P.228

ナナはパリではいつも素顔のまま、顔を隠さず生きた。日本人の若い観光客が駆け寄ってきて「応援しています」と言った。日本では絶対しない握手をナナはしてみせて、私を驚かせた。彼女がここで、望んだような自然な人生を生きている、と思い嬉しくなった。この街、パリでなら私たちは彼女が望んだような普通の生活が送れるのではないか、とも考えた。

私たちはこれからのことを話し合った。ナナは「入籍は私の目標ではない」と言った。賑やかな家庭を作る事にこそ意味がある、と真の決意を述べた。次にパリに戻ってくる時には三人で戻ることになるでしょう、と確信に満ちた予言をした。

フランスから帰国する時は報道陣が空港で待ち受けていたが、混乱はなく、見事な抑制が働いていた。佐々木の姿はなかったが、彼がコントロールしているのは一目瞭然。
私たちはまだ家具さえそろわない世田谷のマンションに新居を構えた。私がそこで最初にしたことは、中学生の頃に画用紙に描いた人生の設計図を破り捨てる、ということであった。

ナナはTVドラマで日本中を移動する過酷の中にいた。睡眠時間は1日平均2~3時間。

ナナ「これまでもそうしてきた通り、私は今後も一生懸命働いて返す、それだけです

「これまでもそうしてきた通り、私は今後も一生懸命働いて返す、それだけです」という言葉になにか違和感を感じませんか?893の世界の話みたいに聞こえます。

サングラスをかけたり、尾行を気にすることもなく伸び伸びと生活するナナの姿を思い描く。私に野心よりも大切なもの、仕事よりも大事なものがあることを教えてくれた彼女に私は普通の暮らしを贈りたかった。

オデオンのアパルトマンで過ごした三か月間の、自然なナナの姿をもう一度見てみたい。家計簿をつけて倹約を訴え、着実な人生を唱えるこの人に、私はその大事な足場を築いてあげたかった。

フランス大使館でビザ手続き。

 

佐々木とZ氏、ナナと4人での会話

Z氏「この世界では一旦引き受けた仕事を簡単に降りてはならないのだよ

Z氏は恐ろしい人と噂があったが、ナナには「寒くないか?座りづらくないか?」と気配りしていた。

Z氏「芸能界というものは、恐ろしいところのように思えるかもしれないが、けれどもここほど人情の厚い世界はないし、また懐の深いところもないよ

トオルが退席している時に、Z氏はナナに「本当に良かったな、おめでとう。幸せになるんだよ」と言った。

やはり会話が893の世界、一般人の私にはそう聞こえます。仲間でいるうちはとても親身にしてもらえるが、逃げだしたらどうなるか、命さえうば…って雰囲気が出ているではないですか(怖)。

日本を離れる前に息子と会っておきたかったが千恵子から連絡はなかった。一心の事を考えない日はなかった。ナナに内緒で写真を隠しもち、夜な夜な眺めては涙する。

トオルは子供のことをずっと気にしてます。今もそうでしょう。例え離婚したとしても、気持ちの上ではとてもいいお父さんです。

春、九州の由布院の温泉旅館を借り切って一年遅れの披露宴を行った。情報が洩れぬよう気をつけ両家の親族代表が集まった。

極秘披露宴で、トオルとナナはひな人形のように座っていた様子など。

P.263 フランス生活

ビザが降り、フランスへ。
特大トランク1つだけ、全くイチから作り直す生活の始まり。

ナナのお腹は大きく迫り出したころ、一日も早く滞在許可証を取得し安心できる環境を整えたい。しかし移民法が変わり審査が厳しくなっていた。

市役所にて不安を口にしたところ、対応に当たった審査官の一人がこう言った。

フランスで子供を産むということは1つの権利を手に入れることに等しい。その子供には確実にフランスで教育を受ける権利が与えられる。当然、親には子供を育てる義務があり、フランス政府はそれら家族を追い返すことはない。

宿った子供は救世主、この子が私たちを未来へ導こうとしている。

渡仏してから半年後、滞在許可証を取得。

言葉の壁もあり、滞在許可証を取るのもかなり大変だった様子。

最後はナナの陣痛→出産

主治医に連絡し、朝9時、陣痛が5分間隔になったのでタクシーでクリニックへ。ナナのフランス人の友人、ニナも来てくれていた。
担当助産師がやってきて、私とナナは分娩室へと向かった。夫以外、立ち入ることが出来ない。
ニナ「ここにいるから、言葉がわからなくなったらすぐに来て」

<出産の状況がいろいろ書いてある。>

フランス時間、2004年1月14日、男子を授かった。

ナナは生まれた赤ん坊をその胸に抱きとめた瞬間、激しく泣き出した。冷静な自分をかなぐり捨て本能のまま、あからさまに母親の顔をして泣いた。

彼女が生まれてはじめて本当に全てを投げ出し、信頼できる自分以外の、ただ一人の人間と出会った一瞬であり、また自分自身の本当の姿と巡り合った瞬間でもあった。

うるうるでした。良かったね、ほんとうに良かった。この陣痛→出産までのシーンは感動でした。

その瞬間、ナナは幼い頃からのただ一つの夢を手に入れる事に成功する。

赤ん坊は泣かなかった。代わりに取り上げられた瞬間から、生まれ出ることを喜んでいるかのように微笑んだ。この子は笑って生まれてきた。まるで悟った一体の仏のように。

終わり

辻さんは文章がほんとにうまい。比喩表現を酷使している。

それにこの自伝小説を読むことができて、みぽりんがどんなに幸せだったか、幸せで穏やかな普通の暮らしを手に入れるためにいろいろ計画し、頑張ったか、がわかって良かったです。マジ良かった。

離婚しなければ良かっただろうな、、とは思いますが、それも人生ですよね。ただ、みぽりんの意志で離婚したのなら仕方ないと思えますが、こうゆう想像もできてしまうんですよね。

結婚生活が単調になる頃に別れさせ屋を遣わされて壊される・・(あ!ただの妄想ですよ!!)ほら、政財界ではハニートラップとか普通にあるのでね。

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芸能界は怖いところ

本の初めの方に出て来た話で、トオルが若い頃、知り合いの女の子が芸能界目指してオーディション頑張るんですね。でもその子は早々田舎に帰ってきます。トオルが「どうだった?」と聞くと、その女の子は「うん。怖いところだった。私には合わない」というようなことを言ってました。

その意味が震えるほど、以下の話に繋がるなぁと思うのです。

ここ数日、TV局と仲居くん問題での芸能界枕接待情報が表に出てきていますね。夢を壊すようですが現実はそんなもんです。10代からそんなところに居たら、もう感覚が狂ってしまっていつの間にか自分が加害側になっていたり。

話変わりますが、日本のフィクサーで有名な方の動画で、みぽりんが若い頃、事務所から独立しようとしてマネージャーが56されたか自4したかで、それが2回あったと言ってました。こうゆうことがあると、忠誠を誓って一生働く、恩義を返す姿勢はうなずけるし、欲を捨てろ、カネを呪う、というのもわかる、すごい世界だな(◎_◎;)。(10年前のフィクサーの動画

みぽりんが言ってた「欲を捨て、人と争うな」。これは、穏やかに幸せに生きる上で重要なポイントなのでしょう。

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みぽりんの遺作ドラマ

もうすぐ放送です。録画しなきゃ!

中山美穂さん、1月クールの連ドラ2本出演 生前に撮影終了「本人が心から楽しみにし、大切に取り組んでいたもの」

  • 日本一の最低男(第1話=2025年1月9日、第3話=1月23日)その他の回は、中山忍さんが出演。
  • 家政夫のミタゾノ(2025年1月14日 第1話メインゲストみぽりん」

みぽりんの本

こちらも書籍が売ってないので、図書館で借りました。ここにはみぽりんのフランスでの幸せな生活、彼女が夢にまでみた生活や、幼少期の話なども結構あからさまに書いてあります。

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